作り手になるまでの物語をたっぷりお聞きしました。

作り手として暮らしを営む人のお話を聞く『works and stories』。
はじめてご登場いただくのは、帆布バッグ制作の「ko’da-style」こうだかずひろさん。

葉山に暮らしていると、頻繁に友人たちからお名前を聞くこうださん。印象的なのは、みんなが「こうださんはね…」と話してくれるときに笑顔になること。

みんなを楽しい気持ちにするこうださんに、海のすぐ近くのアトリエでお話を聞きました。

(聞き手:works and stories 松井咲子/撮影:渡部忠)

5持って楽しくなるものを作りたい 

- 最終回は、いつもポジティブに前進し続けるこうださんのエネルギーの源に迫ります。

松井
バッグのデザインにしても展示会の形にしても、気になるとすぐモヤモヤを解消しようと動いているのがとても印象的です。
こうだ
僕、一個のことしかできないんですよ(笑)モヤモヤが膨らんじゃうと、何も手につかなくなる。
だからそれをなるべく解消するためモヤモヤを解決するって感じですね。

- 動き続けるために、動く。長年ko’da-styleの世界を広げてきたこうださんの言葉には、重みがあります。
では、そうやって常に動き続けられるこうださんのその前向きさはどこからくるのでしょうか。

松井
こうださんは、いつも前向きに動いてこられた訳ですが、どうやって自分をポジティブな状態に保ってるんですか。
ひとりで物を作っていると、ポジティブでいられないこともあるんじゃないかなと思うのですが。
こうだ
基本的には悩まないかな。
物の考え方って裏表ですよね。表の方考えて楽しかったら、表の方だけ考えたらいい。
別に悲しまなくてもね。でも、悲しむ中でもひっくりかえしちゃえばおもしろかったりするでしょ。
だったらおもしろく考えたらいいかなって思ってますね。

- 恥ずかしながら、こうださんとは対照的に私はとても悩み多きアラフォー女子です(笑)
これまで困難に直面したときには悩み悩んで答えを出そうともがいてきたし、「問題があったら悩むしかない」と思っていました。
でも、それだけ悩んで本当に悩みが解消したことって今まで何回あったのかな? もちろん、悩んだ末に小さな光が見える喜びもあるけれど、こうださんのように、その悩みをぐるりと「表」にひっくり返しておもしろく考えてみる。そうやって、一分一秒でも日々の楽しい時間を増やすことができたら、人生の喜びが何倍にも膨らむんじゃないか。こうださんの言葉にそんなことを考えました。
 
長年ko’da-styleをひとりで切り盛りしてきたこうださん、例えばお金がなかったとしたら、どうやってその困難を「表」にひっくり返すのか伺ってみました。

松井
こうださんは、これまでに経済的に厳しい状況になったことはありましたか。
こうだ
あったあった。だけど、あ、だから、貧しさに耐えられるっていうのも大事だと思う。
土俵際でも大丈夫。これは大きいかも。だって耐えられない人は辞めちゃいますよね。たぶん。
僕はそれが、我慢と思ってないのかもしれないけど。それはそれで楽しんでるんです。わ、お金ないや~どうやってご飯食べよう…って(笑)
松井
そんなときはどうするんですか。もがくことによって何とか耐えたみたいな例がありますか。
こうだ
友達と会うかな。この人と会うとラッキーだっていう人が何人かいるの。仕事的に成功している友達や精神的に明るい友達とかいろいろ。その人と会う。
神社のお参りじゃないけど、定期的に電話して、会ってご飯食べてっていうのをやってる、ダメな時は「ダメなんだよ~。」ってすぐに言って。
松井
結局自分で越えようとされるんですね。だってそれは自分を鼓舞する相方ですもんね。
こうだ
うん、それすごく大きいかも。
松井
その人たちは素敵な存在ですね。
こうだ
そうね。向こうには全然そんなこと言ったこともないし伝えたこともないし、もうホント、大学時代の友達なんで、どう思ってるかわからないけど、その友達たちと会いたいときにフラれたときのショックは(笑)
あと日常的な部分では、ジョギング、運動は自分をとてもポジティブにしてくれるし、頭を整理してくれるし、嫌なことがどんどん落ちていく。あ~落ちた落ちた。っていう感じで。
松井
結局自分を高めて何とかなってるっていうことなんですね。
こうだ
うん、なんとかなるんですよ。
松井
これから物作りを始める人が知りたいのは、売れなくなってお金がなくなって、でも解決方法もなくて、袋小路じゃないですか。でも何とかなるという方法を、こうださんが言葉にしているのがすごいです。
こうだ
なるんだよね。

- 経済的に苦しい時も、その状況を「我慢」するんじゃなくて「楽しむ」。そのために、大切な友達に会って素直な気持ちを話して励ましてもらう。ジョギングして嫌なことをどんどん落としていく。あ、やっぱりこうださん、動いてる!
動いて動いて、裏を表にひっくりかえして、そうすると運が味方をしてくれて、いつの間にかいろんな問題がなんとかなる。
でも本当は「なんとかなってる」だけじゃなくて、こうださんが自ら運を引き寄せて、「なんとかしている」ということでもあるんだよなあ。うん、これはちょっと勇気を出して試してみる価値がありそうです!
 
こうださんは、さらにおもしろいお話をしてくださいました。

こうだ
これは僕の座右の銘というか、本田宗一郎さんが言っていた言葉で、いい運を引き寄せる方法みたいな話で、「知力・体力・向上心」、この3つのうち一個でもなくなるとどんどん運が離れていくし、この3つがそろっていると運がつかめるよっていう話なんだけど。
知力は、常に新しいことを勉強しているという姿勢。
体力は、チャンスをつかんだときに風邪をひいちゃったりしたら終わっちゃうじゃないじゃないですか。
向上心は、今に満足しないで新しいことをどんどん広げていきましょうっていうこと。
この3つのうち1個でもなくなると、運がない。
逆に今、自分が運がないと思ったときに、どれか一個欠けてないかっていうのを見なさいって、未だにそれが心に残っていて。
だから落ち込んだ時は、今「知力・体力・向上心」のどれか一個なくなってるんじゃないかって思って考えると、確かに「あ、勉強してない」とか「ランニングしてない」、「健康じゃないことをしてる」とか、「今に満足して新しいもの作ろうとしてない」とか、それで見直してるところがありますね。そうするとちゃんと戻るんですよ!

- 素晴らしい!隅から隅まで納得!
そうすることで自分自身をポジティブな状態に保って活動を続けていける。ただ悩むだけで立ち止まっているよりもずっと健康的で生産的。

こうだ
本田宗一郎さんて厳しい人だったみたいだけど、ユーモアがありますよね。あの人の明るさって絶対成功の秘訣だなって思って。明るさは大切!

- そうなんです、こうださんって本当に明るい!
取材中もずっと明るく楽しそうにお話をしてくださるのを聞いているうちに、いつの間にか私もその世界に引き込まれて、わくわくしてお話を聞いていました。
そして「どうしてこうださんの話をする人はみんな笑顔になるんだろう?」 という取材前の疑問はあっさりと解決したのでした。
 
自分の足を使って知らないことを吸収し、新しいことに挑戦し続ける一方で、ストイックにバッグ作りに向き合ってきたこうださん。そんなこうださんが作るko’da-styleのバッグには、こうださんらしい明るい楽しさが存分に表れています。そしてこうださんのバッグを持つ人は、やっぱり笑顔になってしまうのでしょう。

こうだ
最近、ko’da-styleってどういうカバンをデザインしているかなって客観的に思ったんです。そしたら、「あ、この子達絶対笑ってるわ~」って。
商品にならないカバンって、楽しくないんです。明るくない。
明るいデザインを、持って楽しくなるものをやっぱり作りたかったんだな、僕はって。
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この記事に登場の作り手

ポートフォリオ

こうだかずひろ
大学で経済学を学んだのち、10 年間のサラリーマンを経て、独学でKo'da-style をスタート。2003 年、三浦半島の葉山に工房を移転、工房で作品が購入できる「3days shop」を展開するほか、全国各地で展示会を開催中。

http://koda-style.net

〒240-0112 神奈川県三浦郡葉山町堀内383
046-875-7992 090-1110-1945
hello@koda-style.net

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