作り手になるまでの物語をたっぷりお聞きしました。

作り手として暮らしを営む人のお話を聞く『works and stories』。
はじめてご登場いただくのは、帆布バッグ制作の「ko’da-style」こうだかずひろさん。

葉山に暮らしていると、頻繁に友人たちからお名前を聞くこうださん。印象的なのは、みんなが「こうださんはね…」と話してくれるときに笑顔になること。

みんなを楽しい気持ちにするこうださんに、海のすぐ近くのアトリエでお話を聞きました。

(聞き手:works and stories 松井咲子/撮影:渡部忠)

1オリジナルって全部自分で作り続けていくもの

- こうださんは、作り手として32歳の時に独立。カバン作家となられました。
 
それまでは東急ハンズに勤務。
そのとき、配属された売り場にあったL.L.Beanのトートバッグに自分でストラップをつけてみたことが、カバン作りに興味を持ったきっかけとのこと。
その後、ひとりのバッグ作家との出会いによってバッグ作家の道を志し、誰にも教わらず独学で技術を身につけられたそうです。
 
最初に、現在までko’da-styleに大きな影響を与え続けている須田帆布さんとの出会いについてうかがいました。

こうだ
僕のカバン作りの基本になってるのは、須田帆布さん。
今でも大活躍してるブランドで、その方に「絶対に物まねだけはするな」ってずっと言われてたんですよ。
僕が仕事を始めるときに、ミシン屋さんを紹介してくれたんです。でも金具屋さんはわからなくて、「金具ってどこで買うんですか」って聞いたら、「こうちゃんね、教えてあげるのは簡単だけど、ここで教えちゃうと、須田帆布のko’da-styleになっちゃうよ」って言われた。「新しい金具屋さん、生地屋さん、そこで出会った人と関わることで、オリジナルになるんじゃないの」って。
今から思うと、それがすごくよかった。
自分で探すことでその人だけのものができる。オリジナルって全部自分で作り続けていくものなんだなって。
松井
そこから、自分で探していかれたんですね。
こうだ
ですね。当時はインターネットがなかったから黄色い色のタウンページを開いて、“金具屋”に一軒一軒電話して全部行って、こういう金具があるっていうのを聞いて。
そういうことだよね、最初のうちは。僕はそこで物真似をしないってことは実践してきた。
松井
それって相当なパワーですよね。どうして会社を辞めてまでそんなことができたんですか。
こうだ
知らない世界だからおもしろかったんですよ。金具屋さんとか糸屋さんとか。新しい世界が広がったんです。調べて自分が動くと。
もの作りそのものも楽しかったけど、そこまでの過程がすごくおもしろかった。

- そんな大変に思えることも、「おもしろかった」と言うこうださん。慣れないことを始めるときはわからないことの連続だけど、どうせやるなら絶対おもしろい方がいい!大変な方に目が向きがちで「苦労してナンボ」の昭和のスポ根魂からなかなか抜け出せない私とは180度逆から世界を見ているこうださんの言葉は、さわやかな風が吹いたよう。

松井
会社員になったときから、独立のプランは持ってたんですか。
こうだ
そうですね。
松井
それは、バッグ作りで?
こうだ
なんでもよかったんです。
サラリーマンは、10年ぐらいでなんとなく辞めたいなあと思ってて。
誰でもそうでしょうけど、30歳って一つの壁ですよね。なんか焦るっていうか。
松井
新卒で入社するとき、10年は勤めてみようと思われていたんですね。
こうだ
うん、新卒で入ってからいくつか会社は変わってるけど。その時にはミシンも買って、サラリーマンをやりながら小さいおうちも借りてたんです。そこで休みの日にミシンをやったりしてたの。
カバン屋になろうっていうのは須田帆布さんにあって決めた。だから、須田さんが帽子屋さんだったら帽子屋だったかもしれないですね。

- なんと! 20代ですでに10年後の独立を目標にしていたとは。
会社員時代からミシンを買ってアトリエまで借りていたというのだからその行動力には脱帽です。

松井
カバン作りのどんなところに夢中になったんですか?
こうだ
須田帆布さんの影響が一番大きくて。
ものをつくるのは好きだったからいろいろやっていたけど、カバンって生地は平面。縫っていくと立体、三次元になる。それが面白かった。
(学校で)勉強してる人はデザインしてパターン起こして、モノができると思うんだけど、僕はそこまで勉強したことがないから、こういうものを作りたいな、どうやったらできるんだろうって考えながらパターンを起こすわけです。それで、ひっくり返してみると全然思ってないものができる(笑)それがものすごくおもしろくて、はまっていったんですね。
休みの日にこうやって縫うんだ、ああやって縫うんだってやってて、なんとなくできるようになってきたから、じゃあ辞めようって思ったのが30歳。

- カバンを作れるようになり、独立を果たしたこうださん。どのようにして販路を開拓していったのでしょうか。

こうだ
最初は東急ハンズと取引があって、のれんとかを作ってました。
そういう中で自分の商品サンプルを作っていて、当時二子玉川や恵比寿にあったビッグオークっていうアウトドア店のバイヤーがたまたま見に来て、気に入ってくれて。そこがko’da-styleの納品先第一号になりました。
松井
バッグですか?
こうだ
そう、バッグ。で、それがすごく売れたんです。
松井
なんと!それは何年目で?
こうだ
1年目。だから半年後に商売が始まって。
松井
えー! 独立して半年後からジャンジャン!?

- 次回は、飛ぶ鳥落とす勢いで大躍進を遂げるko’da-styleのその後のお話をお聞きします。

\ この記事をシェアする /

この記事に登場の作り手

ポートフォリオ

こうだかずひろ
大学で経済学を学んだのち、10 年間のサラリーマンを経て、独学でKo'da-style をスタート。2003 年、三浦半島の葉山に工房を移転、工房で作品が購入できる「3days shop」を展開するほか、全国各地で展示会を開催中。

http://koda-style.net

〒240-0112 神奈川県三浦郡葉山町堀内383
046-875-7992 090-1110-1945
hello@koda-style.net

ホームにもどる

トップへ戻る