作り手になるまでの物語をたっぷりお聞きしました。

作り手として暮らしを営む人のお話を聞く『works and stories』。
はじめてご登場いただくのは、帆布バッグ制作の「ko’da-style」こうだかずひろさん。

葉山に暮らしていると、頻繁に友人たちからお名前を聞くこうださん。印象的なのは、みんなが「こうださんはね…」と話してくれるときに笑顔になること。

みんなを楽しい気持ちにするこうださんに、海のすぐ近くのアトリエでお話を聞きました。

(聞き手:works and stories 松井咲子/撮影:渡部忠)

4常に新しいことを

- 第4回は、ストイックにバッグ制作に向き合う、こうださんの職人としての横顔をお届けします。
 
20年以上バッグを作り続けているこうださんに、続けるということについてお話していただきました。

こうだ
自分で言うのもなんだけど、やっぱり、続けることが大切ですね。
ミシンの治具が来るでしょ。そうすると(部品を送った)ミシン職人さんから「50個作って!形になるのは51個目からだから。50個までは失敗だと思って」って言われるんです。
それって本当の話で、50個作らないとそのパーツを使う難しさもわからない。
それで、51個目から「なるほど、こうやってやるとちゃんと縫えるんだ」ってわかる。そこは大切なところ。

松井
(深くうなずく)
こうだ
新しいカバンをデザインすると、「これかっこいいなあ」って展示会に出すじゃないですか。
そうすると、こっちの気持ちがダイレクトに伝わるからいっぱい買ってくれるんです。
でも「このカバン、サンプル1個しか作ってないんだよな…」って思う。そうするとやっぱり…下手ではないんだけど、形が下手なんですよね。逆に昔から作ってるデザインはいつもかっこいいんです。やっぱり、ある程度数をこなしていると、ちゃんと形になってくれてるんですよね。51個目からはちゃんと形になってくれてるものが世の中に出てる感じです。
だから、一番最初の展示会で注文もらってるお客さんに申し訳なくて。

- こうださんは続けます。

こうだ
物を作っていると、自己矛盾が発生することがあると思うんだけど、いつか解消しないと気持ち悪い。
カバンを作っていても「ずっとここが気になる」ってずっとある。そこを克服するためにまた新しいものを作る。
でもお客さんが気に入ってくれていて変わらず作り続けているものもあって、モヤモヤを解消しないと気持ち悪くなっちゃうから、そこはバレないように直してる。ほんと、ちょこっとずつ。
例えば今まではピッチを3で縫っていたのを2に変えてみたり、5に変えてみたり。そういう目に見えない部分で変えたり、ハンドルの長さを3センチ変えてみたり、幅を1センチ変えてみたりというのは常にやっていて。
それをやっていかないと進歩していかないでしょ。そこで止まっちゃうのは最初から負けてるよね、と思う。

- 他の誰かにではなく、自分に絶対嘘をつかないこうださんのストイックさが物作りの中心にあるから、ko’da-styleは愛されるのだと思います。
 
常に前進し続けることと共に、こうださんは、「物真似をしない」という須田帆布さんとの約束を今もしっかりと守り続けています。

こうだ
須田帆布さんに最初に言われた物真似をしないっていう話に戻るんだけど、お店とかにカバンを見に行くと、そのカバンを真似しちゃいそうになるんです。
それを見るんだったらインテリアを見たり、絵を見たり、まったく違うものからデザインソースを得る方が刺激になるし、新しい発想が出てくるから、僕はそういう風にしていて、それは真似しないっていうのとつながってるかなと思っていて。
松井
それは具体的にどういうものを見たことが、形に表れるんですか。
こうだ
形に表れなくてもいいんですよ。これを見たからこの形ってイコールじゃなくても、人間って絶対影響されるでしょ。
例えば家具の金具から影響されたり、カメラのこの赤いのもかっこいいなっていうのが、何か月後、何年後かのデザインに出てきて、あ、これ、あのときのあれだったのかな、って思うぐらいの方がずっといいなと思っていて。
あまりに作るものと近いものを見ちゃうと、コピーするわけではないんだけど、出来上がったときに、「あ、これ、あのとき見たあれだよな」「あれ真似しちゃった」ってなったときに立ち上がれない。
で、それが売れちゃったときには罪悪感がすごいから(笑)なるべく見ないようにしてる。
ただ、人が使っているカバンは見たりはします。そういう風に持つとそんな風になるんだなって実用の面で大切なことなので。
松井
なるほど、常に良いものをみて自分にインプットをしておくっていうことですね。
こうだ
そう、コピーの対象として見るのではなくね。
だって何百年もみんながカバンを作って来て、優秀な人がデザインしてきているんだから、まったく違うものは絶対ありえない。その中で、らしさを出していこうと思ったら、人の物真似をしてる暇はないというか、もったいない。そこは持っておかないと。
こうだ
最初は須田帆布さんの影響がすごく大きくて。
デザインする能力もないし技術もないから「あ、これ須田帆布さんみたいだ」と、そんなことばっかり考えてた。逆にそこからの脱却は難しかったんです。
松井
そこから抜けられた瞬間は覚えていらっしゃいますか。
こうだ
いや、いまだに戦いですね。
なんとなく、これは須田帆布さんぽいかなっていうのがあって、そうなったらもう作らない。
同じ素材を使ってるからどうしても似てきちゃうんだけど、「似てきちゃったら似てきちゃったでいいじゃん」だとたぶん終わっちゃう。そこで「似てきちゃったでいいじゃん」にしないようにしないと、もう続かないと思うんです。

- 須田帆布さんから影響を受けてバッグ作家を志したこうださん。
順風満帆に思えるko’da-styleの真ん中にあったのは、絶対に人と違うものを作るんだという強い情熱と心意気でした。
 
次回はいよいよ最終回。いつもポジティブなこうださんの明るいパワーの源に迫ります。

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この記事に登場の作り手

ポートフォリオ

こうだかずひろ
大学で経済学を学んだのち、10 年間のサラリーマンを経て、独学でKo'da-style をスタート。2003 年、三浦半島の葉山に工房を移転、工房で作品が購入できる「3days shop」を展開するほか、全国各地で展示会を開催中。

http://koda-style.net

〒240-0112 神奈川県三浦郡葉山町堀内383
046-875-7992 090-1110-1945
hello@koda-style.net

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