3展示会ってカフェでもできる
- 松井
- こうださんは、17年前に葉山にアトリエを移されたそうですね。
ジャーナルスタンダードでのお仕事がうまく行っているなかで、どうして葉山に来られたんですか。
- こうだ
- ジャーナルスタンダードとの付き合いが深くなっていって、バイヤーも2代目3代目って代わっていって、店舗数も増えて、それにただ付き合うだけのメーカーのようになり始めたのもあったし、あとは、僕の展示会に僕個人のお客さんを呼ぶようになってきたんです。
展示会って見てみたいじゃないですか。僕もそういう風に思うので、消費者の人たちも絶対に見たいだろうと思って始めたら、「ここ色変えてもらえませんか」「いいですよ、変えますよ」ってどんどん楽しくなっちゃって、そっちの世界に行きたくなっちゃったんです。
それで、ジャーナルスタンダードとのお仕事は辞めて。
仕事もだんだん安定してきていたし、間借りもそろそろやめて独立したアトリエを作ろうと思って、たまたま海に来た時に葉山でここを見つけて引っ越しました。
- 松井
- 葉山に来られてから作るものは変わりましたか。
- こうだ
- 個人のお客さん寄りの物作りに戻れたのは、こっちに来たからかな。
- 松井
- へー。東京で展示会の経験も積まれて、葉山など、どんな場所でもやれるようになったと思ったんですか?
- こうだ
- 本当にいいものであれば、商業施設に入ってなくてもいいし、みんなが探しに来てくれるってなり始めのタイミングだったのかな。葉山に来たのが。
だから僕が何もしなくても東京から訪ねてきてくれたりしたんです。もちろん、雑誌とか出たりはしていたけど。
ものをちゃんと作って、売り方をおもしろくすれば、場所は関係ないし、逆にわからない方がいいんじゃないかという気持ちになったのは葉山に引っ越してからかな。
それは別に僕がなにかしたんじゃなくて、時代の流れ的にそうなった気はする。
- 松井
- こうださんは、全国各地の展示会に呼ばれている感じがするのですが、それはどうしてだと思いますか。
- こうだ
- たぶん、工業的にやってるブランドが個人のお客さんを展示会に呼ぶってそれまでやってなかったと思うんです。だれでもウェルカム、あなたのために作りますってのをやってる人がいなかったから、お客さんに「展示会って私も行っていいんだ~」ってハードルを飛び越えてもうらうことができたのかな。
それがおもしろくて、展示会ってカフェでもできるよって感じで神戸の喫茶店でやったり、そうすると展示会をみながらお茶が飲めるんだっていう発見があったり、喫茶店の雰囲気がそのまま商品の雰囲気になったり、なんとなくそういう風になっていったのかなという気がしていて。
そうすると呼ぶ方もうちでもやってくれるんじゃないかな。って思い始めてくれたのかな。今はどこもやってるけど、当時はそんなことをやっている人がいなかったから。
- 東京でパン屋さんと一緒に展示会を開くところから始まり、次々と新しいことに挑戦していくこうださん。
いつも新しいことにチャレンジし続けるこうださんの姿勢はカバン作りそのものにも表れているはず。
次回はカバン制作に日々向き合う、作家としてのこうださんのお話をお伝えします。
(つづく)