作り手になるまでの物語をたっぷりお聞きしました。

作り手として暮らしを営む人のお話を聞く『works and stories』。
はじめてご登場いただくのは、帆布バッグ制作の「ko’da-style」こうだかずひろさん。

葉山に暮らしていると、頻繁に友人たちからお名前を聞くこうださん。印象的なのは、みんなが「こうださんはね…」と話してくれるときに笑顔になること。

みんなを楽しい気持ちにするこうださんに、海のすぐ近くのアトリエでお話を聞きました。

(聞き手:works and stories 松井咲子/撮影:渡部忠)

2動かないと何もないから、動く

- 今回は、こうださんに訪れた恩人2名との出会いとko’da-styleの大躍進についてお話を伺います。

松井
独立して半年でそんなにバッグが売れたんですか?
こうだ
結構な数が売れました。アルバイトしないでご飯食べられるぐらい。
松井
すごい。
こうだ
その次に、洋服屋さんを回りたいなって思って。
かっこいいって思ったセレクトショップに適当にサンプルを持って飛び込みで入って。
松井
またすごい! その行動力が!
こうだ
いや、楽しいの。やったことないから。営業。

- すごいなあ~! 私は何か始めようとすると、相手がどう思うか気になって行動に移せないことがよくあります。そんなハードルをふわりと飛び越えて、素直な気持ちで飛び込んでいけたら、思いがけない展開が待っているのかもしれない…。
そんなこうださんに幸運が訪れます。

こうだ
ベイクルーズのデザイナーさんとお昼ご飯を食べてるときに、「そういえば、こうださんって帆布のバッグつくってるよね?」って言われてサンプルを見せたら、「ちょっと預かってもいい?」ってカバンをそのまま預かってくれたんです。そしたら、たまたまそのデザイナーさんの後ろを通りかかってカバンを見たジャーナルスタンダードのバイヤーさんから電話がかかってきて、「これを今シーズンやりたいんですけど」って。
一回きりの話だと思ったんだけど、渋谷店の店長が気に入ってくださって、そこからジャーナルスタンダードの世界がわ~っと広がって。
松井
何年目ですか?
こうだ
2年目かな。
2年目の春に初めてジャーナルスタンダードに入って、次の秋冬の話がすぐあって。
松井
ジャーナルスタンダードさんとお仕事されていたときは、一度にいくつぐらい納品していたんですか。
こうだ
100単位ですよ。だから、物を作る量が全然変わってくるわけです。
物の数が違うから、(生地の)裁断屋さんというのがあるらしいって話を聞いて、「裁断だけやってくれる人がいるんだ、世の中に!」って思って、探すわけです。タウンページで(笑)
それで、車で行って裁断を頼むと「こうだくん、ここ縫うとこだけやってくれる人がいるんだけど、職人さん仕事がないから、出してくれませんか?」って言われて。「ここだけ縫ってもらって、僕がアッセンブリーを作って縫う感じなんですか?」って聞くと、「そうそう、そんな感じのやり方がカバン屋さんの流れ。」「へえ、そうなんですね。」って、ポケットだけ縫うとか、ハンドルだけ縫う人と知り合って。
「は~、世の中ってこういう流れになってるんだ」というのを教えてもらった。
知らないことを知るって楽しいじゃない? そんな流れですよ、最初は。
松井
100単位の物をそういう風に作られたんですね。
こうだ
そう、ジャーナルスタンダード、ベイクルーズさんのバイヤーさんには、展示会の方法、DMの出し方、出す内容、出す時期、値段設定、アパレルの中での物の流れを全部教えてもらって。
そこで物作りの楽しさ、辛さも含めていろいろ教わったし、自分が発信していかなきゃだめって教えてくれた。本当にko’da-styleの基本のき、を作ってくれた人です。

- ここまでお話を伺って、こうださんが幸運を引き寄せられる秘密は、恥ずかしがらずに「知らない」と言えることだと気が付きました。
見栄っ張りな私は、知らないことを知られるのが恥ずかしくて知ったかぶりをしてしまう。そして本当はそっちのほうが何倍も恥ずかしい!(笑)
こうださんは、アパレルの世界を知らないからこそ、自分の感覚を信じて素敵だと思うお店に飛び込み営業をしたり、裁断屋さんや下縫い屋さんとの出会いからカバン作りの流れを知っていく。良い意味での開き直りは真の強さ。
格好つけずに心をオープンにして相手と関わろうとするから、相手も喜んで教えてくれる。そして、素直に感謝して自分の学びにしていく。
そんな良い循環の中で、こうださんはまた新たな素晴らしい出会いを果たします。

こうだ
それから、馬詰さん(※フードコーディネーターの馬詰佳香さん)との出会い。
代官山のG.O.D.っていうお店が大好きで、社長の高須さんに展示会やるから遊びに来ない? って言われて行ったのが馬詰さんのBORN FREE WORKSというギャラリーだったんです。

こうだ
なにこのかっこいい場所!ここで展示会やりたい!って思った。
BORN FREE WORKSはおもしろいギャラリーで、一軒家を真っ白く改装して、和のテイストがあったり、カウンターがあってキッチンが付いてて、馬詰さんはケータリングもされるので、そこでお料理を作ったりしてたんです。
そこに月に2回、関口ベーカリーさんっていうパン屋さんが来ていて、カウンター越しにパンを作ってる姿がとにかくかっこよくて美しかった。
 
それで、展示会をやることになって馬詰さんと話しているとき、「展示会やるときに彼らがいてもいいでしょ?」って。
展示会のときパンを売ってくださるなんてそんなラッキーなことないじゃないですか。ぜひご一緒させてくださいということで、そこから”誰かと一緒にやる”っていう展示会パターンが始まるんです。
馬詰さん関係で知り合った人たちでその後のko’da-styleが出来上がったという感じで、コーヒーイベントをやったり、DJイベントをやったり、そういうかっこいい人たちが集まる部屋だった。
僕の中では、ko’da-styleの恩人といえば、その三人が大恩人。須田帆布さんとジャーナルスタンダードのバイヤーさんと、馬詰さん。
松井
こうださんの引き寄せ力はすごいですね。出会ったみなさんが素晴らしくて、こうださんをさらに色づけてくださるんですね。
こうだ
うん、色づけてくれる。でも色づけてもらうためには、こっちが動いていないと、色づけてもらえないから、一生懸命動くしかない。動かないと何もないからとにかく動く、っていうのが一番大切かも。モヤモヤせず。モヤモヤするならぱっと外に出ちゃった方がいい。
例えば景気が悪くなってダメなときに嵐が過ぎ去るのを待つ人もいるんだけど、僕はとりあえずワタワタしたい。ワタワタすると答えが出てくると思ってるタイプだから。なるべく動く。人の出会いがなかったり、ものが回ってないときって、自分の内側に気持ちが入ってるっていうか、こうあるべきみたいに固執してることが多いから、なるべく積極的に動いて押せ押せの波にしてる。

- なるほど、モヤモヤせずにとにかく動く!これなら私にもできるかも。それにしてもずっとぐるぐる波を起こし続けるにはどれだけのエネルギーが要ったことでしょうか。
 
次回は、常にエネルギッシュに動き続けるこうださんがされた大きな決断と、葉山での活動についてのお話しです。

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この記事に登場の作り手

ポートフォリオ

こうだかずひろ
大学で経済学を学んだのち、10 年間のサラリーマンを経て、独学でKo'da-style をスタート。2003 年、三浦半島の葉山に工房を移転、工房で作品が購入できる「3days shop」を展開するほか、全国各地で展示会を開催中。

http://koda-style.net

〒240-0112 神奈川県三浦郡葉山町堀内383
046-875-7992 090-1110-1945
hello@koda-style.net

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