作り手になるまでの物語をたっぷりお聞きしました。

今回は、鎌倉の大町でレザークラフトのアトリエ兼ショップを営む、TSUZUKUのオーナー齊藤篤さんと、その奥様の麻紀さんにお話をお聞きしました。

取材に伺う以前、鎌倉・大町を訪れた際に、趣ある古民家をリノベーションされたTSUZUKUさんのシックな店構えに釘づけになった私。こんな素敵なお店の中にはどんな方がいるのだろうとずっと気になっていました。
この度、取材にお邪魔させていただくことになり、ドキドキしながらお店に向かうと、温かく優しいおふたりが、笑顔で迎えてくださいました。

(聞き手:works and stories 松井咲子/撮影:渡部忠)

2ワゴンショップに机とミシンひとつで。

- 第2回は、篤さんが職人として急成長していく過程をお話していただきます。

松井
(デザインフェスタに出展して)最初から好スタートだったんですね!
齊藤
ラッキーでしたね。
松井
それで改めて革でやっていきたいという気持ちになったんですか?
齊藤
そうですね。最初に注文を受けたのが、美容師さんがハサミを入れるケースだったんですけど、時間があったので届けに行ったんですよ。そうしたらまた注文をもらって、作って届けてというのをしばらくやっていて。ただ、そこからどう仕事にするかっていうのは当時は全く考えていなくて。
そうしたらデザインフェスタのときにキーケースの注文をもらった方が眼鏡屋さんだったんですけど、その方に「お台場の小さいワゴンショップを集めたところでお店を出すからよかったら一緒にやる?」って声をかけていただいて、やりますって。それで、夏からお台場に行きました。ワゴンショップの一角に机とミシンひとつ。そこで作りつつ、売りつつを半年やりました。
松井
いい出会いが連続してますね!

- やはり自分から動いて前に進もうとする人には、良い出会いが舞い込んでくるのだと思います。
お台場の後は、南船橋のららぽーとのワゴンショップでも制作・販売を続けられました。

松井
ワゴンショップってあまりイメージが浮かばないのですが、どんな感じでされていたのでしょうか。
齊藤
ディズニーランドだったらチュロスとか売ってるじゃないですか、ワゴンで。ああいうのが点在してたんです、吹き抜けの広い廊下に。普通はそこに商品を並べてレジを置いて販売するんですけど、僕は作らないといけなかったので、ミシンを置いてやっていて。でもワゴンなので定期的に移動があって。今月はこっち、来月はあっちっていう感じでガラガラワゴンを引いて。

- ワゴンショップで毎日奮闘する篤さん、小松さんとはどういう関係が続いたのでしょうか。

齊藤
小松さんとは時々食事して、みたいな関係で。わからないことは電話して、「縫う幅は何ミリぐらいがいいですか」「15ミリぐらいかな」「あ、わかりました」みたいな。
松井
そうなんですね。修行にはいつ行かれたんですか。
齊藤
南船橋は3年半ぐらいいたんですけど、そこも終わって時間ができたので、初めて秋田に行きました。習わずに勢いで来ていたのを自分でもわかっていたので、改めて教えてくださいって電話で言って、じゃあおいでって言ってもらって。
松井
じゃあ、ご自分で活動もしてお仕事もしてから改めて修行をしたという感じなんですね。
齊藤
最初にちゃんとやっておけばよかったなと思っています。
「なんとなくこういうの作れるかな?」って言われて、自分なりに解釈して作ることはできても、なんていうか、一番きれいに作れる基礎知識は学校も行かないでやっていたので、足りないんじゃないかなと思って。
松井
小松さんの元に行ってみて発見がありましたか。
齊藤
そうですね。
松井
一番良かったのはどんなことでしたか。
齊藤
革の断面処理だったり、これを塗ってからこれで磨いて最後にこれをやってっていう工程とかも、ああなるほど、と思うこともあったので。
松井
ちゃんとした処理の仕方がわかったんですね。
秋田では小松さんのおうちに住み込みされたんですか。
齊藤
そうですね。一か月半ぐらいですけど。
小松さんは教室でいろんなところに行っているのでお手伝いしたり、イベントで北海道に行ったり。
松井
小松さんも若い人が革の世界に入ってきて嬉しかったんですね。
齊藤
そうですね。温泉が好きな人で、朝から仕事をして、昼は外に食べに行って、夕方になったら温泉行って、帰って寝るっていう。
松井
私は師匠だからてっきり厳しい修行生活だったのかと…。
齊藤
あまり怒られたことはないですね。
松井
今もいい関係でいらっしゃるんですか。
齊藤
ときどきメールが来ます。
どういう革を使ったらいいよとか、ミシンの針はこれがいいよとか。

- いいですね。篤さんと小松さんの関係は軽やかで、信頼関係で結ばれていて、いいなあ、こういう関係。風が通るような気持ちよさを感じます。
新しい知識を吸収して帰ってきた篤さんは、また次の動きに出ます。

松井
秋田から戻って、次はどうされたんですか
齊藤
戻ってきて、代官山に店を出しました。
お客さんと話して作りたくて、店がないとそういう場がなかったので。
松井
小松さんのところにいらっしゃって、やっていける自信が得られたんですか。
齊藤
そうですね。強みにはなったと思います。

- 最初の店舗に代官山を選ぶとは!
そういう話を聞いて、小心者の私が心配になるのは現実的なお金のこと。代官山のような一等地にお店を構えるのはさぞかし大変なことだと思いますが…。次回はお店をオープンしてからのお話。開店資金のお話、
公私共にパートナーである麻紀さんとの出会いについても伺います!

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この記事に登場の作り手

ポートフォリオ

齊藤篤
学生の頃から革の小物やバッグ作りを始め、その後、小松俊彦氏に師事。​2005年11月、前身である「革工房atsu」は代官山の1室からはじまる。定番アイテムと独自の世界観の1点ものを展開しながら、お客様のご要望に寄り添い、カスタムオーダーやフルオーダーにも対応。

https://tsuzuku.work/

〒248-0007 神奈川県鎌倉市大町1-3-24
0467-53-8313
info@tsuzuku.work

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