作り手になるまでの物語をたっぷりお聞きしました。

今回は、鎌倉の大町でレザークラフトのアトリエ兼ショップを営む、TSUZUKUのオーナー齊藤篤さんと、その奥様の麻紀さんにお話をお聞きしました。

取材に伺う以前、鎌倉・大町を訪れた際に、趣ある古民家をリノベーションされたTSUZUKUさんのシックな店構えに釘づけになった私。こんな素敵なお店の中にはどんな方がいるのだろうとずっと気になっていました。
この度、取材にお邪魔させていただくことになり、ドキドキしながらお店に向かうと、温かく優しいおふたりが、笑顔で迎えてくださいました。

(聞き手:works and stories 松井咲子/撮影:渡部忠)

1ナイフに鞘がなかったから、見よう見まねで縫ってみた。

- 今回は、鎌倉の大町でレザークラフトのアトリエ兼ショップを営む、TSUZUKUのオーナー齊藤篤さんと、その奥様の麻紀さんにお話をお聞きしました。
 
取材に伺う以前、鎌倉・大町を訪れた際に、趣ある古民家をリノベーションされたTSUZUKUさんのシックな店構えに釘づけになった私。こんな素敵なお店の中にはどんな方がいるのだろうとずっと気になっていました。
この度、取材にお邪魔させていただくことになり、ドキドキしながらお店に向かうと、温かく優しいおふたりが、笑顔で迎えてくださいました。

松井
篤さんは学生のころからレザー小物を作り始められたんですね。その後、小松さん(※革職人の小松俊彦氏)に師事されて代官山に工房を開き、鎌倉に拠点を移して現在に至るということですが、どういう経緯だったのかをもう少し詳しく教えていただけますか。
齊藤
たまたま家にナイフが一本あったんですけど、そこに鞘がなかったので、危ないじゃないですか。
それで、東急ハンズで革と針と糸を買い、本屋で本を買って、ナイフの鞘の作り方を見て見よう見まねで縫ってみたのが一番初めです。
松井
ナイフの鞘が最初の作品だったんですね!
もともと手を使って物を作るのがお好きだったんですか。
齊藤
何でも作るのは好きでしたね
松井
学生時代にはそういう分野の勉強をされていたんですか。
齊藤
いいえ、全然。
松井
趣味として楽しんでいらっしゃったんですね。
齊藤
そうですね。東急ハンズが好きだったので。行くと何かしら作りたくなるじゃないですか。なので、迷うことなく革と針と糸を買いました。縫うのはどうやるんだっていうのを見て。
松井
インターネットもそのころないですね。
齊藤
ないので、本です。
松井
今は何でもYouTubeで見られたりするけれど、20年前はそうじゃなかったから始めるときの熱量が必要ですよね。
齊藤
本に縫い方は載っているんですけど、革を切った断面はどう処理したらいいのかもわからなかったので、最初は家にあった靴墨を塗っていました。切ったままじゃ嫌だけど、何を塗ったらいいかわからないから。色のついている黒とかこげ茶の靴墨を淵に縫ってそれっぽく

- 正解かどうかわからないけれど、靴墨を塗ってみたという実行力。穏やかな口調で淡々とお話をされる篤さんですが、ものすごいパワーを感じます。

松井
そこからどんどん革に夢中になられたんですか。
齊藤
最初の頃は、友達の誕生日で作ったり、自分の財布ぐらいしか作ってなかったですね。
松井
そうだったんですか。師匠の小松さんとはどういう風に出会われたんですか。
齊藤
東京でデザインフェスタっていうイベントがありますよね。革の人もいるから行ってみたら?って友達に言われて。端からからずっと見て、革の人と話をしてみた一人が小松さんなんです。
デザインフェスタって個性的な人が多いんですけど、そこに年配の男性がいたんです。秋田から来ていると聞いて僕大学が岩手だったので、今度夏休みに行きますって言ったのが最初ですね。
松井
実際に夏休みに秋田に行かれたんですか?
齊藤
そうですね。初めて本物の工房に入りました。(小松氏は)ひとりでされているので、そこでミシンも踏ませてもらって。あ~こうやるんだって。一晩泊めてもらって、ひたすら革を触って端切れをたくさんもらって帰ってきました。
松井
そこからどういう形で小松さんが師匠になられたんですか。
齊藤
その時は僕も大学生だったので、たまに東京でお茶をするみたいなつきあいが続いて。大学卒業後に専門学校に通っていた頃、「革でやってく気ある?」って聞かれて。やってみようかなと思ったので「やります」って。

- 軽やかに人生の波に乗る篤さん、すぐに次の行動に出ます。

齊藤
それで、僕もデザインフェスタに出してみようと思って。春に出したのが一番最初の「人に作品を売る場」でした。
松井
それは修行されている間ですか。
齊藤
いえ、最初は修行も何もなく。もらった端切れがいっぱいあったので、バッグとかいろいろ作って出したんです。見よう見まねでやって出したのが最初です。

- へー!多くの人は何かを始めようとするとき「まだちゃんと習ってないから」と理由をつけて自分にストップをかけてしまうことがあると思います。でも、そもそも「そんなレベル」ってどんなレベル?と考えると、単なるイメージでしかないのかも。経験が浅くても、見よう見まねでも、何でも「やってみたもん勝ち」なんじゃないだろうか。篤さんのお話を聞いていると、そんな風に思えてきます。

松井
デザインフェスタに出してみてどうでしたか。
齊藤
幸いに思ったより売れたので、あ、おもしろいなと。
松井
やっぱり作ったものが人に届くって喜びですよね!
齊藤
一番の喜びですよね。これいいなって買ってくれて、「あ~何千円も出してくれるんだ」って。おまけにそこでオーダーまでしていただけて。

- そこでなんとオーダーまで受けることになるとは!次回は、革職人としての好スタートを切った篤さんのその後のストーリーをお聞きします。

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この記事に登場の作り手

ポートフォリオ

齊藤篤
学生の頃から革の小物やバッグ作りを始め、その後、小松俊彦氏に師事。​2005年11月、前身である「革工房atsu」は代官山の1室からはじまる。定番アイテムと独自の世界観の1点ものを展開しながら、お客様のご要望に寄り添い、カスタムオーダーやフルオーダーにも対応。

https://tsuzuku.work/

〒248-0007 神奈川県鎌倉市大町1-3-24
0467-53-8313
info@tsuzuku.work

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