1自分がこんなにおしゃべりな人だとは思ってなかった。
- 松井
- 会社を退職して、次のステップとして整体の仕事を始めたのはどうしてですか。
- 小牧
- あれは本当に思いつき。ぱっと浮かんだんだよね。
会社員時代はすごく忙しかったし今思えばいろんなもがき方をしていて、結局ここで一生やっていく感じじゃないと思って辞めたんだけど、じゃあ次何やろうかって思ったときに悩んでたら、「あ、整体いいじゃない?」っていうアイデアがぽっと出て。「いいかも!」ってノートにバーッと書いたみたいなのが始まりで。
今思えば健やかに過ごせることに関係している何かをやりたいって思ったのかな。
あるとき、疲れ切ってたときに家の近くの指圧治療院ですごい経験をして。
1時間ぐらいの施術を受けたら、その夜ちょっと熱っぽくなって9時頃に寝ちゃったんだよね。
それで次の朝、こんな爽快な目覚めは体験したことがないっていう目覚め方をして、なんだこれは!って思った。そういうことができる世界なんだということがその時になんとなく感じたっていうか。
あと、(会社員とは)全然違うことをしたいっていうのもあったとは思う。
オフィスでずっと働いてるとメールとか電話が多くて実際にお店に来るお客さんとは接触しないから、常に自分の周りに見えない膜みたいなものがあるような感覚があって。
直接お客さんと関われるのは何であっても楽しめると思ったかな。だからね、当時は自分がこんなにおしゃべりな人だとは思ってなかった(笑)
- 松井
- お客さんとお話しするのが好きなんですね。
- 小牧
- 人に興味があるんだよね。だから苦手な人が本当にめったにいない。
この人はどういう人なんだろうっていうことに興味がある。
- 毎日パソコンと向かい合うオフィスワークと、お客さんの体に直接触れる整体の仕事は180度異なる世界に思えますが、「人に興味がある」という小牧さんの説明は、単純明快、すっと腑に落ちました。初めて会った人とも臆することなく話ができて、空気を明るくする小牧さんが整体師を選んだのは自然な流れだったのでしょう。
- 松井
- 整体を選んだとき、将来こういう風になりたいというビジョンがあったのですか。それとも漠然と?
- 小牧
- 整体を思いついたときにはすでに自分の整体院を作るっていうのを思いついたんだよね。最初は整体師になって整体院を作ろう、みたいな感じだった。
まだ整体のことは何も知らない頃に、そういう思いつきをしたんだけど、スクールに行くようになったら、やっぱり学ばなきゃいけないとか経験を積まなきゃいけないっていうのがあったから、いつのまにかそういう考えは全くなくなってた。
- 松井
- なるほど、ではスクールを卒業して最初に整体院で働き始めた時は、オフィスで働いていたときと気持ちの変化を感じましたか?
- 小牧
- いや、単純に比較できないな。
整体院に初めて勤めたときは本当に初めて現場に出るわけだからすごく必死で。
今より分からないこととか不安なこととかすごく多かったから、「うわ~オフィスと違うぜ!楽しい~!」みたいに思う暇もなかったというか。
今もう10年近くこの仕事をして、今と、例えば7年勤めた会社での自分を比較すれば「あ~全然違うなあ。こっちの方が断然好きだなあ。」とは思うかな。
でも始めてすぐのときは、違うからいいとは思わなかったと思う。すごく大変だったことは覚えてる。
学んだことだけでは対処できないことが多くて、聞いたり調べたり、でバタバタしてたなって思う。
- 松井
- でも、これはやっていけそうだなっていう感覚はありましたか。
- 小牧
- うん、そう、それはあった。
大変だったけど、今思えばまだまだだったけど、いろんなテクニックを仕入れてこれを使えばここがこうよくなるみたいなのがどんどん増えていく過程だったから、わからなかったら先輩に聞くとか、本を買うとか、スクールの友達に相談するとかで、やっぱりこれはこうすればいいんだ、みたいな手数が増えていったからすごく充実感はあったね、大変だったけど。
今の充実感とはまた全然違う感じ。まだ自分本位だったんだよね。施術をするのが楽しい、みたいな。自分ができるのが楽しい、みたいな。今はもうちょっと違う感じになってきたなと思う。テクニックを楽しむっていうよりも、お客さんがどういう状態なのかみたいなことにより興味関心が行くっていうか。そういう意味ではちょっと余裕が出て来たのかもしれない。
- 人と直接関われる仕事をしたいと整体師を志し、学校に通って整体師としてデビューを果たした小牧さん。
新しいフィールドでの日々に奮闘しながらも、少しずつ自分の成長を感じながら充実感を持って過ごしていたことがわかります。
整体院での仕事にも慣れ、職場でも頼りにされる存在になった頃、小牧さんは鍼灸あん摩マッサージ指圧師の国家資格取得のため専門学校に入学することを決意します。
そこから3年間、仕事をしながら毎日授業に出席し、国家試験の受験勉強をするのは並大抵のことではなかったと思いますが、なぜまた思い切った行動に出たのでしょうか。
- 小牧
- まずは、やっぱりもっと知りたい、もっとやりたいっていう思い。
整体をやっていて自分の知識とか技術にちょっと限界を感じ始めていて。
一概に国家資格がすごいとかそういうことではないとは思うんだけど、ある一定の基準を満たしているっていうという意味で体系的な勉強ができるなと思ったんだよね。
例えば衛生のこともそうだし、一般的な病気のこともそうだし、施術の技術だけでなく、そういうことを体系立てて学べる。
それに、鍼とか灸で自分の手以外に使える手段があると、施術の幅とか効果とかが広がるんじゃないかと思ったんだよね。それでもっと効果が出せたり、お互いに楽に施術できたりとか、使える技なんじゃないかって。そういう、自分の技術とか好奇心を満たしたいっていうのがまず大きな理由。
それから、あとは本当に実利的な理由。国家資格を持っていると、病院や接骨院や鍼灸院にも勤められたり、有利になることもあると思った。
- これまで様々な方と会ってお話を伺う中で、天職に出会ったんだなあと感じる方には共通点があることに気が付きました。それはどんなに長くその仕事を続けていても、常に向上心を持って新しい挑戦を続けていること、
そしてそのことを心から楽しんでいらっしゃることです。小牧さんのお話からもやはり同じことを思いました。楽しいと思う余裕がないほど大変で苦しい時間が続いても、その仕事を心の底で楽しいと思いもっとよくなりたいと願えたら、それはその人にとっての大切な仕事になるのだと思います。
3年間の通学と受験勉強、国家試験を経て、晴れて鍼灸あん摩マッサージ指圧師の国家資格を取得した小牧さんも、やはり自然と新しい挑戦をすることになります。
それは、「漢方茶ブレンダー養成講座」を受講することでした。
- 松井
- どういう経緯で、国家試験の後に漢方茶ブレンダーの養成講座を受けたのですか。
- 小牧
- 最初は勤めてた整体の店の同僚が勉強を始めたっていうので詳しく話を聞いて。
相手に合わせてブレンドするっていう考え方のもので、それで「これはいい!」ってすぐ思ったの。
施術をその人の体に合わせてオーダーメイドでするのと同じように、オーダーメイドでお茶を作るっていうのは面白いなって思ったのと、お茶は飲むものだからおなかの中に入る。体の中からも働きかけられる。
施術は体の外から押したり刺したりするから、外からと中からと両方から刺激を入れられるっていうコンセプトがいいなと思って、これは開業するときにやりたいなと思って、頭の中に入れていたんだよね。
それで、いよいよ開業することになってこれは柱になるなと実感した。
- 漢方茶ブレンダ―養成講座を修了した小牧さんは、無事、漢方茶ブレンダーとして認定を受けました。
今では、鍼灸や整体と並ぶ、kibacoの大きな柱の一つになっている漢方茶。基本のオーダーメイドブレンドに加え、ギフトなどの用途に手軽に手に取れるオリジナルブレンドも手掛けて、漢方茶の世界が広がっています。
鍼灸あん摩マッサージ指圧師の国家資格を取得し、漢方茶の知識も深めた小牧さんはいよいよkibacoの開業に向けて動き出します。次回は開業に至る経緯や開業後の心境について伺います。
(つづく)