作り手になるまでの物語をたっぷりお聞きしました。

今回は、鍼灸あん摩マッサージ指圧師の小牧さんにお話を伺います。

小牧さんは、都内の商社でおもちゃの輸入販売に携わった後、整体院での勤務を経て、昨年3月に葉山町、整体・はり灸と漢方茶の店kibacoをオープンしました。
実は、小牧さんはこの文章を執筆する私、松井の夫でもあります。この十数年間、私は家族として小牧さんの仕事を含めた人生の変遷を見てきましたが、思えばこれまで面と向かって仕事への想いを聞いたことはなかったかもしれない。
今回はインタビュアーとして、小牧さんのこれまでのことや現在の仕事のことをゆっくり聞いてきました。

(聞き手:works and stories 松井咲子/撮影:渡部忠)

3やりたいことを手を抜かずにきちんとやっていることが続くことになる。

- 最終回では、kibacoでの日々、そしてこれからの展望についてお話ししていただきました。

松井
夢を叶えてやっとできた空間で自分が目指す施術ができて、お客さんにありがとうって言ってもらえて、もうそれだけでお金を頂かなくても嬉しいというのが本当のところだと思いますが、とはいえ家族で生活していくためにはお金は必要で。そこが大変なところですよね。

小牧
本当にそれは日々大きなプレッシャーを感じていて、やばいって言いながら動き回ってる。
それは施術だけをしているだけではなかなか今達成しづらくて、施術以外のところで売り上げを伸ばしていく方法をいろいろ考えてるところ。
本来やりたいのは施術をしてお茶を出してその話をしてっていうことだけど、その延長線上で何か別の仕組みというかお金を作らなきゃいけないなっていうことで、二週漢(※kibacoのオリジナル漢方茶)を作ったり、それを発展させる形でオンラインでの漢方茶の相談を受けて、ブレンドしたお茶を販売することを始めようとしている。
 
施術を受けに来てくれる人がリピートしてくれる確率はすごく高いから、やってることはたぶん間違ってないんだろうなと思うんだけど、まだお客さんの数自体が少ないことを考えると、やっぱり全国に向けてお茶の販売ができるとすごく幅が広がると思った。
それに並行してここのお客さんも増やしていかなきゃいけないから、口コミとお知り合いでこういうところに興味のある方がいらっしゃったらぜひ紹介してくださいってお客さんごとにお願いしたり。
 
だから施術とは別のところでお金を作る仕組みを早く作りたいなということと、一方で認知を増やして来店してくれるお客さん自体が増えるようにっていう二つをプレッシャーを感じながら考えてる。
最近は、小児ばりとかセルフケアとしてのお灸をもっとアピールしてもいいなと思ったり、施術だけっていうよりも別のところでちゃんと売り上げが立つようにしたいかな。
松井
そういうことをするのは楽しくなってきましたか。
小牧さんは施術にすごく理想があるし、本当にそれがしたくてここを始めたのだと思うのですが、自分ひとりでやるってやっぱりそういう細々したことをたくさんしなきゃいけないですよね。
会社も辞めたぐらいだし(笑)ビジネスがそんなに楽しめるタイプではないのかなと思っていたのですが…。
小牧
まだ正直言って楽しいまでは行ってない。
まさに最初整体院に勤め始めたときみたいで、もうやらなきゃいけないからとにかく頑張るしかない。今は必死にやってる感じ。
幸いちょこちょこ話を聞いてくれる人がいるから、相談しながらやってる。
あとは開業して長い友達に聞いてみたり、ホームページ見てみたり。とにかくそれが必要だから頑張ってやろう!って言う感じ。
まだそれを楽しむ余裕はないかな。
松井
でもそれも含めて一人でやりたいという気持ちが強いですか。
例えば誰かが大変なことをやってくれて、施術と漢方茶のブレンドだけに集中できるとしたらどうですか。
小牧
それはね、結局、監督したくなっちゃうというか。人にやってもらうっていうのは、不安になっちゃうかな。それがうまくいかなくなったときに、すごく自分の心理的健康が損なわれる気がする。その人のせいにしてしまうとか。
だから大変だけど、自分で四苦八苦しながらやれたほうがいいんだろうなと思う。
そこで頑張ってやったら何かが見えてくるんじゃないか、見えてきてほしいと思いながらやってる。
やってみたことがうまくいったり、これどうだろうあれどうだろうって考える事自体は嫌じゃないし、トータルで大変ではあるんだけど、別に一個のこれが嫌とか大変とかいうことではないかもしれないなと思う。
だから何が大変?って聞かれると…まあカメラの前で表情が作れないことぐらいかな(笑)YouTubeの。

- 自分の店を持つことは、自由である反面大きな責任を負うことも意味します。
お店がオープンして一年、自分が良いと思う種をたくさん蒔き、たっぷり水をやって大事に育てていく。今はそんな時期なのでしょう。日々大きなプレッシャーと戦いながら、お店の経営についてあれこれ考えて試行錯誤して、結果に喜びを感じたり、将来に希望を持てたり、そういうことすべてをひっくるめた全部が自分で自分の店をやることの醍醐味なんだろうなと思います。
 
経営的なプレッシャーを感じ日々奮闘しているという小牧さんですが、それでも、やはり一番大事にしているのはお客さんに喜んでもらいたいという想いです。

松井
利益を上げること以外でkibacoを続けるために大切だなと思うことは何ですか?
小牧
それは、やっぱり僕自身のモチベーションを保つことだろうなぁ。
やっぱりこの仕事自体がすごく好きだからモチベーションを保つために何かをしているっていうことではなくて、お客さんが来てくれて仕事ができたらそれがモチベーションになってるから、お客さんにきちんとサービスをして来てもらうっていうことを日々ちゃんとやることかな。
家族にも施術をした日も顔色が良いってよく言われるけど、やっぱり人と話して施術をするっていう一連のことがやりたいことだし、やると元気が出ることだからそこがモチベーションを保つことにつながってる。
そのモチベーションを保つためにお客さんに来てもらいたいから、認知を高めたりっていう実際の話になってくるんだと思う。
やるべきことをやっていれば、やりたいことを手を抜かずにきちんとやっているっていうことが続くことになるんじゃないかなと思う。

- お客さんのために「やりたいことを手を抜かずにきちんとやる」。そしてお客さんに喜んでいただく。
お客さんが来てくれて仕事ができることがモチベーションになる、という小牧さん。
kibacoを続けていくためにするべきことは、これに尽きるのだろうなと思います。

松井
お客さんが来てくれるって言うのは単にお金がもらえるっていうことではなくて、続いていくっていうことなんですね。
小牧さんも喜んで施術ができて、嬉しくて、良い循環ですよね。
小牧
本当にそう思う。お客さんに喜んでもらえて自分も喜んでっていう。
非常に人間的なつながりができる。いつも思うんだけど、お客さん、みんないい人で。
松井
小牧さんはどのお客さんも本当に嬉しそうにお迎えしている印象があります。
小牧
そうね。前の仕事と違うのはその場で結果が出ること。
その場で喜んでもらえたかダメだったかがわかるし良いんだけど、すごく怖いことでもあるよね。でもそれが良いのかもしれない。
その場で全力を尽くすっていうことがすべてだから、他を気にしなくていいっていうか、ここでとにかくやりきるって言うのが性に合ってるのかも。
松井
なるほど!では今後の目標を聞かせてください。
小牧
まずは売り上げをきちんと作って店を回していけるようにしたい。
だから、今いろんなことを試し始めているけど、それを継続的にきちんとやっていく必要があって、きちんとできるやり方を見つけたいっていうのと、今回の一連の話をしてだけど、kibacoがここにあるのが普通っていう状態に早く持っていきたい。
「あ~新しいお店ができたんだよね」じゃなくて、「あそこにあるよね。」っていう存在になりたいかな。
僕もお客さんもここでやってるのが日常みたいな。まだ想像つかないけどね。そういう状態がね。
松井
去年オープンしたばかりということでこの一年は大変だったこともあるし、思いがけないコロナ禍でいろんなことがあったと思いますが、やっぱりオープンしてよかったって思っていますか。
小牧
思ってますよ!(笑)もう大変っていうのはわかってたからね。
コロナ禍で予想以上に大変だったっていうのはあるけど。
葉山に来たら仕事とかそのほかのことも含めて自分がしていることをすごく楽しそうにやってる人が多くて、自分もそういう風に自分のやってることを楽しんで生きるっていうことを素直に感じていたいなと思って。
それが今できているからすごく幸せなんだよね、きっと。だからよかったと思う。
 
うちの子も僕の仕事はもちろん知ってるわけだけど、もっと僕が仕事とか生きてることを楽しんでるっていう姿を彼に見せたいと思っている。
仕事とか暮らしてることはすごい楽しいんだっていうのを、彼は地域のいろんな大人を見て感じてくれているんじゃないかと思うけど、我々ももっとこう楽しんでいるところを見せたいなとは思ってるかな。

- 日々悩んだり試行錯誤したりしながらも、心から「お店を始めてよかった」という小牧さん。
常に自然体で、目の前にいるお客さんに喜んでいただけることを一生懸命にする。
簡単なようで、なかなか私にはできないことばかりですごいなあといつも感心します。
どんどん自分の気持ちに素直に生きられるようになっているという小牧さんが、仕事も暮らしも目一杯楽しんでいる姿を見て、きっと息子も何かを感じているはず。
そして私もそんな背中を見せられる母親でありたいと思います。
 
小牧さんがこれからどんなkibacoの世界を作っていくのか、とても楽しみです。

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この記事に登場の作り手

ポートフォリオ

小牧翼(たすく)
Sandringham Secondary College 卒業
国際基督教大学 卒業
ウィルワンアカデミー 整体プロフェッショナルコース 修了
日本鍼灸理療専門学校 本科 卒業
都内の整体院、整骨院に8年間勤務の後、kibacoを開業

https://kibaco.life/

〒240-0113 神奈川県三浦郡葉山町長柄424-1
046-854-4219
info@kibaco.life

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